第15章 ●気づき●
エマはそのまま腕の中で寝てしまった。
エマにした行為を思い返すと加虐的だった。
あそこ迄虐める必要があったのかと自分でも思うが、エマの顔を見るとどうも自分が抑えられない。
何故かわからないが…
…いや、わかってるが気づかない振りをしていた。
俺はエマに好意を持っている。
いつからかわからない、あいつが初の壁外調査後に同期を失い号泣した時か。
いや…きっと、こいつを新兵勧誘式で見た時からじゃないだろうか。
エルヴィンが何をしようが構わない。
だが、エマに対しては別だ。
エマのあの顔は俺だけのものだ。
エルヴィンも少なからず他の女とは違う感情をエマに対して持っているようだ。
これまでエルヴィンが自室に自分から他人を招き入れることは無かった。
大体の時間を職務に費やし執務室にいることが殆どのエルヴィンだ。俺の知る限り、相手の方から抱いてくれと来ても執務室で済ますことばかりだった。
エルヴィンの人身掌握術は並ではない。正直上官であること云々でなく、エルヴィンの言うことには普通のやつなら断れない。エマでもそれは難しいだろう。
ましてエマのことだ、エルヴィンを慰めることが調査兵団の為だ、なんて言われたら自らの身体を差し出すかもしれない。
エマが元に戻った後、また執務室を行き来し始めれば、エルヴィンはどうする?
だが、今の俺にエマをそこまで拘束する権利はない。あくまで選ぶのはエマだ。
エマの寝顔を見ながら、そうして考え事をしていたが、エマの安心しきったような顔を見ると自分にまで眠気が襲ってきた。
もうすっかり日も暮れ、今日急ぎでやらないといけないこともないだろう。
珍しく眠気が襲ってきた。
普段は無理やり目蓋を閉じているくらいだ。
このまま気持ちよく眠気に支配されることにした。