第12章 ●選択●
さっきまでバルコニーにいたエマの姿がない。どこへ行った。
嫌な予感がする。
こういう時の俺のカンは結構当たるからタチが悪い。
貴族の豚どもを適当にまき、エマがいたバルコニーへ向かう。
そこにエマが履いていた靴が片方だけ転がっていた。
「おい!エルヴィン!!」
エルヴィンの周りの豚どもを睨んで散らし、エマの靴を見せ、
「やられた。エマが見当たらん。どうする」
「…マズイな。私はここの責任者に事の次第を話し協力を仰ごう、お前はエマを探せ」
「探すったってこの建物の中か外かもわかりゃしねぇ」
「いや、多分中でいいだろう。使われてない隣の塔の部屋数はそんなに多くない。あそこはエマを抱えて人目を偲ぶには丁度良いだろう」
そう聞くと同時に走り出した。
「エマ!!おい!返事しろ!」
叫びながら部屋を一つずつ乱暴に開けていく。
一番奥の部屋から僅かながらくぐもった声が聞こえた。
「そこか!エマっ!」
バターーン!!
扉を開けたが部屋の中にいたのは、口と両手首に巻かれた布以外、何も身に纏っていないエマだった。
窓が開いており、犯人は俺の声に気づいて先に逃げたらしい。
月光に照らし出されるエマの身体は美しかったが、それは欲情をそそる様なことはなく、ただ怒りしかこみ上げなかった。