第10章 夜会
ほどなく訓練も再開し、またエルヴィン団長とリヴァイ兵長の部屋を交互にお手伝いする日々が始まった。
「エマ、以前よりさらに書類の処理が早くなったな。
もう殆ど私がサインするだけで済むようになってるじゃないか」
「ありがとうございます、お忙しい団長の負担を少しでも軽くできているのなら嬉しいです」
「身体もすっかり治ったみたいだな、訓練に精を出してるとハンジが言っていたぞ」
ふふふ、と二人で笑いながら会話出来る。
この日常こそが幸せなのかもしれない。
「ところでエマ、君に頼みがあるんだが…」
少し団長の声のトーンが変わり、
「次の夜会に君も出席してもらえるか。
これまで女性はナナバやリーネにお願いしてたんだが、先方から違う子を連れてこいと言われてね。
私もリヴァイも一緒だから安心していい」
と申し訳なさそうに言われた。
私は夜会に行けるような服などは何一つ持っていなかったが、兵団御用達の頭からつま先までお任せできる店があるので問題ないらしい。
傷跡も上手く化粧で誤魔化してくれるらしい。
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エマが負傷した壁外調査以後、エマは他の兵士達と少しずつだが打ち解けていっているように見えた。
それが、良かったと思う反面、エマの隠れた素顔は自分だけが見たい、という思いが湧き上がっていた。
俺は一体どうしたってんだ。
あれからエマは以前と変わらず一日置きに執務室に来て、仕事を手伝って、お茶をして帰った。
そのお茶をしている時のエマのフワッと笑う顔や、ソツなく話す話の上手さなど毎回見惚れてしまっていた。
あの時あんだけ泣いてやがったのにまるで別人じゃねぇか。
逞しいヤツだ。
まぁ逞しくなきゃ調査兵なんか務まらねぇか。
そういえば、エルヴィンから明日の夜会はエマも一緒だと聞いた。
普段は鬱陶しいだけの夜会だが、少し楽しみになった。