第9章 初陣の傷跡
「さて、身体の方はかなりの怪我だ。
しばらく治すことに専念するように」
「はっ、お気遣いありがとうございます」
「しばらくまた君の淹れる紅茶が飲めないと思うと残念だが」
こんな時でもこの人は…と思った。
けど、今はこうした何気ない会話が有り難い。
失ったものは大きいが、少しずつまたあの日常に戻していきたい。
「レイドのことは残念だった。
だが…彼の死と引き換えに君は生き残る事が出来た。
彼の死を意味のあるものにするのは、残された君と調査兵団の使命だ」
エルヴィン団長は真っ直ぐに私の目を見て話す。
そうだ。ハンジさんも兵長もそうだ。
他の兵士も皆同じように仲間の死を悲しみ、向き合い、乗越えてきたのだ。
前を向いて進む事が生き残った者の責任なのだ。
「はい。エルヴィン団長、ご心配をお掛けしました。
もう大丈夫です」
エルヴィン団長の目をしっかりと見返して答えると、
「そうか。そうだな。もう少し早く来られれば良かったんだが」
と、エルヴィン団長の顔がフッと緩んだ。
「いえ、お忙しい中わざわざお越しいただいただけで恐縮です」
「いや、もう少し早く来ていれば見たことのない君の顔が見れたかもしれないと思ってな」
さっき、リヴァイ兵長の前でワンワン泣いてしまったことを思い出し、それを言われているのだと思うと恥ずかしくなった。
「さぁ、寝てばかりで退屈かもしれないが、しっかり寝て早く治すように」
「了解です、ありがとうございます」
エルヴィン団長が退室するのを見送り、あれだけ寝たのにまた眠気が襲ってきた為休んだ。