第31章 夢と贖罪
「エマ…ありがとう。
君は俺の右腕になってくれると…」
「はい。そのつもりです」
団長は寂しそうな笑顔を浮かべ、
「少し…俺の昔話を聞いてくれるか?」
「???」
唐突に団長は話し始めた。
「私の父は教員をしていた。
ある日授業でこの壁の中の歴史を学んだ。
皆が学ぶものだ。私はあることを疑問に思い、
父に質問をしたがその場では答えてもらえずはぐらかされた」
団長が大きな青い目を伏せながら語り出した。
「私は、壁の外に人類がいないとなぜわかるのか?と質問した。何故断言出来るのか。父は、家に帰ったら私の質問に答えてくれた。
父の仮説だが、王政は歴史書と民衆の記憶を改竄したというものだった」
「!!!!!」
団長は驚く私を見て、さらに続けた。
「父が教室でその話をしなかった事を察する程私は賢くなかった。
私が父の話を街の子にしていたのを憲兵に尋ねられたその日、父は遠くの街で事故に遭って亡くなった。
私の父は、真実を隠そうとする何者かと、愚かな息子によって殺されたのだ。
それ以来、父の仮説の答え合わせをするのが俺の夢になった…」
団長は、ふぅ…と一息吐いた。