第30章 ●最後に●
団長は腕を片方無くしたものの、命は取り止めた。
私は落ち着いた頃を見計らい、団長の部屋へと向かった。
守りきれなかったことをお詫びしなければいけない…
コンコン…
「エマです」
入るよう促される。
「エマ、身体の調子はどうだ?」
片手では髭も剃れないのか、無精髭を生やし髪もいつものようにセットされていない団長が笑いながら私のことを気遣った。
「団長、私はなんともありません。ですが、私の力不足で団長をお守りすることが出来ませんでした…申し訳ありません…」
私は頭を下げ、自分の無力を詫びた。
「エマ…俺が今まで巨人に何人喰わせて来たと思ってるんだ。腕一本じゃ足りないくらいだ」
と、団長は明るい声で私に言った。
この人の懐の深さたるや。
そう言って見せることで私が自分を責めないようにしてくれたのだった。
「それよりエマ、出来るなら頼まれて貰いたいんだが…」
「何でしょう??」
「左手じゃまだ上手く髭が剃れなくてな…情けない姿を皆に見せることになってしまっている。君が出来るならお願いしたいんだが…」
照れ臭そうに言う団長が可愛らしく見え、つい笑ってしまった。
「大丈夫ですよ。慣れている訳ではありませんが団長が左手でされるよりかは上手くできると思います」
そうして、私は団長の髭を剃るという任務を与えられたのだった。
早速、石鹸を泡立て団長の顔に置いていく。
団長はベッドで寝ていた身体を起こし、私の方に身体を捻っていたが、少し苦しそうに見えた。
「あの…団長、その姿勢しんどくないですか?お許しいただけるなら私が正面に参りますが…」
「すまない。そうしてもらえると助かる」
私は団長に跨る形で髭を剃っていった。
跨ると言っても相手はケガ人なので、腰は下ろさなかった。
「出来ました。これでいつもの格好いい団長になりましたよ」
「言ってくれるな、エマ」