第29章 奪還作戦2
だが、そこからさらに阿鼻叫喚が続いた。
鎧が巨人を投げて寄越したのだ。
降ってくる巨人に潰された者、巨人が落ちたときの爆風で飛ばされた者、混乱した馬に落とされ巨人の手の中に落ちた者…
「…私の代わりはいる…エレンを…」
団長が息も絶え絶えに呟いた。
地獄だ…
もう…誰も帰れないかもしれない…
…いや、まだだ!私は兵長に命ぜられている!
「団長!エレンも取り返して、私達も生きて帰ります!!
兵長に命ぜられています!!!」
そう叫んだ時だった。
私達の周りを囲んでいた巨人が、何故か一体の巨人に向かって進み出しその巨人を喰っていた。
さらに、その巨人を喰い終わると、鎧の方へと向かっていったのだった。
「…この機を逃すな!!『総員撤退!!!』」
団長が声を振り絞り指示を出す。
皆、全速力で帰還した。
帰りに被害は殆ど無かった。
巨人が私達を無視して鎧の方へと向かったからだった。
私は団長の身体を抱えて馬を飛ばした。
団長の意識が飛ばないよう声を掛け続ける。
「団長!!もう少しです!!
あと少しで帰れます!!
しっかりしてください!!!」
団長は辛うじて意識があるものの、もう目が虚ろだった。
団長は、私に聞こえるか聞こえないかのか細い声で
「…エマ…、愛してる…。
…君を…抱きたい…」
と言った。
「団長!!帰ったらいくらでも!!
だから、もう少し頑張ってください!!!」
私は団長の意識を飛ばさない為に必死で応えた。
私が叫ぶと、団長の顔が少し微笑んだように見えた。
そして私達はなんとか帰還し、団長は即刻病院へ運ばれ、皆負傷の度合いは違うが手当てを受けることとなった。
今回も被害は甚大だ。
私は大きな怪我こそしていないものの、団長の血で全身が真っ赤に染まり上がっていた。
手当てを受けていると、リヴァイ兵長が現れた。
「エマ、良くやった」
それだけ言い、頭にポンと手を置かれた。
「…団長の腕が…やられました…。
申し訳ありません…」
兵長の目が見れず、俯いたまま謝った。
「あぁ、知ってる。だが、あれだけの状況でお前は良く俺の命令を守ってくれた。先ずは休め」
涙がぽとりと落ちた。
団長を守りきれなかった。
兵長の優しい言葉が一層身に染みた。