第29章 奪還作戦2
人数をかき集めて長距離索敵陣形を組んだものの、やはり被害はそこかしこで出ていた。
日没まで時間が無く、巨人の出現を確認しても極力最短ルートを維持した結果だった。
特に、実戦に慣れていない憲兵団がその餌食となっていた。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
巨人に捕まった憲兵団の断末魔が聞こえる。
104期のサシャがその様子を見ていた。
「サシャ!前を向いて!そのまま走って!!」
私の非常な指示に青ざめた顔で前を向くサシャ。
そう、時間が無い。
助ける時間も余裕も無いのだ。
勿論何も思わない訳は無い。
命に優先順位があることを、調査兵は理解している。
巨大樹の森に近づこうとした時だった。
発光が確認された。
アルミンがエルヴィン団長に、巨人化の際の発光と思われると進言した。
「総員散開!!
エレンを見つけ出し奪還せよ!
敵は既に巨人化したと思われる!
戦闘は目的ではない!
何より奪い去ることを優先せよ!」
エルヴィン団長の号令が飛ぶ。
104期と一部駐屯兵団が森の中へ、私達と憲兵団が森の周りに散った。
私はエルヴィン団長に付いていった。
そこかしこで巨人の餌食になっている憲兵が目に入った。
もうすぐ森が終わるといったところで、森を抜け走って行く鎧の姿が見えた。
目を凝らして鎧を見ると、猿轡をされベルトルトと思われる少年の背中に担がれているエレンの姿が確認出来た。
「団長!エレンです!!」
私は叫び団長に伝える。
ここからどうする?
多分エレンはまだ死んでいない。
わざわざ猿轡しておぶっているんだから。
だが、この状況でどうやって取り返す??
「各班!!巨人を引き連れたままでいい!!
私に付いてこい!
『鎧の巨人』がエレンを連れて逃げる気だ!!
何としてでも阻止するぞ!!」
「エルヴィン!!俺達をまた囮に使うつもりか!!」
「そんなつもりはない!憲兵団は良くやっている!!」
団長とそれに反する憲兵がやり合いながら馬で駆ける。
私と数人が団長の後に続いていった。
鎧はそこまで脚が早く無い。
追いつける…
「このまま追い越せ!!」
団長の指示が飛ぶ。