第21章 壁外調査とトロスト区
あの日話をしてから、フロイドは何も言ってこなくなった。
まるで一切、何も無かったように毎日が過ぎていた。
私は徐々にではあるが身体の調子を取り戻しつつあったが、減った体重と体力が中々戻らず本調子とは言い難かった。
エルヴィン団長の元で仕事をしていた時だった。既に壁外調査の日程は一週間後に迫っていた。
「エマ、今日は茶に付き合え。話がある」
そう言われるとやむを得ない。
以前と同じくソファに腰掛け紅茶を啜った。
「私が何を言いたいかわかるだろう」
「はい…」
「君を今回の壁外調査には連れて行けない」
ぐっ…と、胸の奥がつかえた。
身体がまだ元に戻っていないことを言われているのだ。
「勘違いしないで欲しい。君は非常に良くやってくれている。
だが、それとこれとは別だ。万全の状態でなければ壁外では己の身だけでなく仲間の命も危険に晒すこととなる」
「…了解…しました…」
「話はそれだけだ」
俯いて黙り込んでいると、フワッと風が頬を撫でたと思ったらエルヴィン団長に抱き締められていた。
「っっ………!!!」
「ここからは団長としてではなく、俺個人の話として聞いてくれ。
エマ、俺は君の事を大切に思っている」
突然の予想だにしない団長の告白だった。
「壁外調査に連れて行かないのはあくまで団長としての判断だ。
それは信用してくれ。今ここでこうして気持ちを打ち明けたのは…」