第20章 紋章の力
「レイドは私に『諦めるな、生きろ』と言ってくれた。
あの時の私は兵士として生きる覚悟もなく、むしろ死ぬ理由として兵士や壁外を選んでいた。無自覚なまま。
…けど、レイドはそんな私の心を私以上に理解してくれて、そんな私を好きでいてくれて、最後には己の命でもって私に道を示してくれた」
そう言うと私は、スッ…と自由の翼の紋章を取り出した。
あの日兵長から渡されたレイドのものだ。
あれ以来ずっと兵服のポケットに忍ばせていた。
フロイドは驚いたようで、目を見開き紋章に視線を落とす。
「フロイド…、あなたの大切な大切な弟を死なせてしまってごめんなさい…
…レイドは、いつかリヴァイ班に入り、調査兵団の精鋭として、人類を巨人から解放すると言っていた。
私は…レイドに生かされた。
…だからレイドが残した意志を…
継いで前に進まなければいけない。
…私はもうレイドから充分に力をもらった。
だからこれはあなたに託す」
そしてフロイドに紋章を握らせた。
フロイドは俯き、紋章をジッ…と見つめる。
「…レイド、お前はバカだな。
なんで調査兵団なんかにしたんだよ。
一緒に憲兵になって、腐った組織を中から変えようって言ってたのに……こんな女に引っかかるから……」
フロイドの声は震え、頬を涙が伝っていた。
私はそれ以上何も言わずにフロイドを残しその場を去った。