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白銀の女神[リヴァイ・エルヴィン]

第18章 それぞれの想い


これでいい。
私だけが秘めて日常に戻ればいい。


フロイドは私に報復したが、あれで足りたのだろうか。顔を合わせることが出来るのだろうか。


これからの事が見えないまま、眠りについた。






次に目を覚ますと、兵長の姿が見えた。
ベッドの脇に置かれた椅子に座り、コクリコクリと舟を漕いでいた。


私は兵長を起こさないように、そっと身体を起こし身支度をしようとした。


「…起きたか。すまねぇな。
お前が目を覚ます前に出て行こうと思ったんだが」


物音を立てたつもりはなかったが兵長を起こしてしまった。


「いえ…ここは兵長の自室ですから…出ていくのは私の方です。
…兵長、助けていただいてありがとうございました」


「いや、俺は助けていない。ただ見つけただけだ。…すまない。もっと早くに気づいていれば…」


兵長は悔しいような悲しいような、どちらとも取れるような顔で俯いていた。


兵長…そんな顔しないでください。


言いたかったが、言葉が出てこなかった。
兵長には知られたくなかった…。
このままここに居ると、涙が溢れそうだったので身支度をして部屋を出ようと立ち上がった。
すると、兵長が後ろからぐっと私を抱きしめた。



「へいちょ…何を…」


「すまない…すまなかった…」


「兵長は悪くありません。悪いのは私だけで…誰も悪くないんです…」


なんとかお互い声を絞り出したような会話だった。


「なぁ…エマよ、
やったヤツの顔を見たんだろ…
何故言わない…俺に言え…」


耳の横で兵長が囁く。
それは甘い類のものではなく、なにかすがる様な弱々しい声だった。


涙がボロリと溢れた。

いつも強くて美しい、人類最強の兵士長にこんなことをさせてしまっている…。

私はそっと兵長の手を解いた。


「兵長…ありがとうございます…」



それだけ言って部屋を出た。
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