第16章 重なる想い
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信玄様が私を連れてきたのは、城にほど近い河川敷だった
夜風が火照った頬に気持ちいい
「…なんだか、気を遣わせてしまったようで…すみません」
「いや。うちの者たちこそ調子にのって、飲ませすぎたな。すまん。」
「……っ」
信玄様が優しく微笑み、その手を私の頬に添えた
その手に触れられて、身体に痺れが走る
今、そんな顔されたら…
お酒を言い訳にもっと甘えたくなってしまう…
私は、その想いを振り払うように口を開く
着物の袷から煉瓦色の火打ち袋を取り出すと、手に持った、火打ち袋を両手で信玄様の前に差し出した
「…すっかり返すのを忘れてしまって……」
「…あぁ。これか」
信玄様が一瞬、目を細める
「幸村から聞きました。戦に行く武将はみんな持っていくって…生きて帰るためのお守りなんですよね?」
「………」
差し出された、袋を黙って見つめる信玄様
「こんなに大切なものなのに、返すのが遅くなってすみません」
「…良かったら、これは君が持っていてくれないか?」
答えに少し間を開けた信玄様はそう言うと、袋を持った私の手に自分の手を添えた