第16章 重なる想い
呆気にとられて、謙信様の背中を目で追っていると
「…やはり凄いな乃々は。」
柔らかく微笑む信玄様
「え?」
「謙信様が二度も女に酌するなんて」
「君は、俺が思っていた以上だな」
幸村が凄いものを見た様な顔をして、佐助くんには感心したように見つめられ、その視線が少しくすぐったい
「案外、ほんとに悪女の素質あるんじゃねーの、お前」
「幸は甘いな。悪女よりも、天女の方が本当に男の心を動かすもんだ」
幸村が訝しげにすると、すかさず信玄様が言葉を挟む
「天女なんかじゃないって、言ってるのに…」
でも…悩んだ甲斐はあったかな
「ーーー乃々。」
不意に、信玄様が真面目な顔で私の名前を呼んだ。
「…はい?」
「ありがとうな。」
信玄様の一言が私の心に広がる
この人は…本当にずるい…
たった一言で私を簡単に喜ばせる…
私は…貴方への想いでこんなにも揺れているのに…