第16章 重なる想い
「今日の乃々も綺麗だが、俺はこの前の城下で着ていた着物の方が好きだ」
信玄様が熱く語る
そうだ。あの時は緋色の着物で、信玄様とお揃いみたいだった
子供じみた信玄様と一切興味のない謙信様の、対照的な姿に思わず笑ってしまう。
「それはさておき、乃々。ちゃんと食べながら飲んでいるかい?お腹に何かいれないとすぐに酔いが回るからな」
そう言って信玄様が、団子やお饅頭などの甘味が山盛りに積まれた皿を私の目の前に置く
信玄様はお酒を飲む時もスィーツなんだ
大量のスィーツに目を丸くしてると
「見ているだけで胸やけしそうだ。お前の嗜好は、およそ理解しがたい」
謙信様が白い目でそのお皿を見てる
「そう言うお前だって、好きなものを食べ続けるって意味では人のこと言えないだろ」
信玄様の言葉に、謙信様の前にある皿を見ると
山盛りになった梅干しがあった
梅干しって…こんな大量に食べる物だっけ?
見てるだけで口の中が酸っぱくなってきた
「謙信様は梅干しがお好きなんですね」
「酒のつまみとしては、これ以上のものは考えられん」
そう言いながら、梅干しを口に放り込むとクイッと盃を煽る
「確かに梅割りとかあるし、お酒には合いますね」
「ほう。なかなか話のわかるやつだな」
謙信様の口角が、少し上がった……気がした