第16章 重なる想い
「やぁ、姫。さ、ここのお座り」
「座りませんっ!」
自分の膝の上をぽんぽんと叩く信玄様を無視して隣に座る
「冷たい姫だなー」
「おい。気持ち悪いから、その腑抜けた顔をやめろ。斬り刻むぞ」
拗ねる信玄様に殺気じみた視線を送る謙信様。
謙信様、不機嫌そうだけど…
来て大丈夫だったかな?
「こんな可愛い天女が来てくれたんだ、怖い顔するな謙信」
「俺は呼んでない」
「乃々。今日も綺麗だな〜」
そんな謙信様の声が聞こえないのか、信玄様は私を隣に満足そうだ
今日の宴でも私は女中さんたちの着せ替え人形にされていた
綸子地、地浅葱匹田、朱と紫雲形に桐、縫い取り入りの小袖。
鮮やかな水色が美しくパッと目を引く艶やかな着物だ
「あの…すみません。謙信様の物をお借りして…」
「俺は知らん。お前のことは、女中に任せてある」
女中さんがやってる事とはいえ、この着物の所有者は謙信様なのだからと、一言お礼する私を謙信様に鬱陶しそうした
「色が、お前好みの着物で妬けるな…」
「え?そ、そうなんですか?」
不満げにぼやく信玄様の言葉に、謙信様の方を見ると
確かに謙信様は、いつも水色っぽい爽やかな色の着物を着てるかも…
今日の打掛けと並んで座るとお揃いみたいだ…
うーん…何か女中さんたちの思惑のようなものを感じる…