第2章 旅立ち
「飛んで行けば、すぐじゃん」
「それは駄目なんだ」
ゴールドドラゴンがいる山へは、歩いて行かなければならない。飛んで行った者もあったが、山はその者を拒むかのように、いつまで飛んでもたどりつけるどころか、距離が縮むことすらなかったそうだ。
「でもさ、敵が出てきたらどうするんだよ?」
「その時は、ロック鳥の姿になって戦えばいい。母さんは俺が看るから、お前はゴールドドラゴンに会いに行ってくれないか?」
「は?!俺が?!」
「おそ松君。これもこの世界を知る、いい機会だと思う」
「けど俺、変身できないし」
「お母さんのためだよ!」
「~~~~~~っ!!分かったよ、分かりました!!やればいいんでしょ、やれば!!」
半ばやけくそで外に出たおそ松は、ロック鳥になる自分をイメージしてみた。だがそう簡単にはいかない。
「母さんのためだ!!ロック鳥に俺は、なる!!」
どこかで聞いたような台詞だが、その想いが通じたのか、ついにロック鳥の姿になることができた。
「やった!やったぞ!!」
「よくやった、おそ松!それでこそ俺の息子だ!」
松蔵に全力で誉められたおそ松は、照れ臭そうに鼻の下を指でこすった。
「父さん。俺、行って来るよ!ゴールドドラゴンに会って来る!」
「頼んだぞ」
「おう!任せろ!」
おそ松は眠る母の側に座って、言った。
「母さん。父さんの言うことも聞かずに好き勝手してて、ごめん。俺、馬鹿だからさ、こんなことにでもならなきゃ、分からないんだ。でも、もう間違わない。必ず帰ってくるから、それまで待ってて」
母親の額に口付けして、父親の方を振り返る。
「父さん。母さんを頼む」
「ああ。必ず帰って来いよ」
「もちろん!!このカリスマレジェンドおそ松様に、ドーンと任せな!!」
「すぐそうやって、調子に乗る!」
松蔵のゲンコツがおそ松の頭に落ちる。
「いって!!殴らなくても、よくね?!」
「早く行け!」
「へいへい」
家を出ると、皆がそこにいた。
「おそ松。行くんだね」
「私たちも、待ってるから!」
「おそ松。これを持って行け」
「私はこれを」
丈夫そうな胸当てや薬ビンをもらったおそ松は、皆を見渡した。
「ありがと、皆。いってきます!」
こうして言い伝え通り、新たなる翼は神の待つストーグロックへと旅立った。