第16章 海を支配する者
おそ松がロック鳥になるや、住民たちが騒ぎ出した。
「あああ!あれは……!」
「大いなる翼!!いや、新たなる翼か!!」
「お前ら、乗れ!」
仲間たちが乗ろうとすると、酒場の店主が止めた。
「待ってくれ!お前たちが言い伝えの当事者だとは知らず、失礼なことをした。お詫びと言っては何だが、これを使ってくれ」
そう言って差し出したのは、4つの指輪だった。
「これは俺たちの力を呼び出すための指輪だ。闇エルフ、お前は黒魔術を使うんだろ?黒魔術は犠牲を払う必要があるから、お前自身に負担がかかっていたはずだ。この指輪なら、その心配はない」
「……あんたたちは…いや、この街は一体…?」
「ここは俺たち精霊族の街だ。俺は炎の精霊、イフリート」
「地の精霊、タイタン」
「風の精霊、シルフ」
「水の精霊、ウンディーネ」
「俺たちの力を欲する時、指輪をはめた手を天に掲げ、名前を呼べ。必ず力になろう」
「分かった。ありがたく頂くよ」
一松は左手に指輪をはめた。
改めておそ松の背に乗る仲間たち。
「いっくぞー!!」
「「おう!」」
仲間たちを乗せ、ロック鳥が羽ばたく。街の姿が見えなくなった頃。水しぶきをあげながら現れたのは、巨大なイカの足だった。
「来やがったな、クラーケン!!」
だが、肝心の頭が水中にある。
「これじゃあ石にできないわ!」
十四松が矢を放つが、頭が見えないために目測がつかない。
「だめだ、うまくいかないや」
「あの足を焼き尽くせば、頭を出すかも知れん」
カラ松が目を開きいて足を焼き尽くし始めると、さすがのクラーケンももがき出した。残りの足を出し、ロック鳥を捕らえようとしている。だがカラ松の熱線で焼かれてしまい、短くなった足が悔しそうに動いている。
「ふっ。所詮はその程度か!」
その時だった。
「カラぴ、危ない!」
とっさに目を閉じたカラ松の背が○○に押された。そして。
「がふっ!!」
○○の腹部を、クラーケンの足が貫いた。そのまま宙へ持ち上げられる。
「○○!!」
貫かれた腹部から流れ出た血は次第に形を形成し、それはペガサスへと変貌した。
「す、すげぇ…!」
全員が○○に気を取られている隙に、さっき焼き尽くされた足が復活し、ロック鳥を捕らえてしまった。