第10章 自我を食らう者
「オゥケィ、いいだろう!このカラ松に勝てるかな?」
「けっ!お前に勝つくらい、なんてことはないぜ」
「そうやって、すぐ調子に乗るんだから…」
少しして、大きな建物の前にたどり着いたおそ松たち。とたんにさっきの倍以上の数のゴブリンたちに囲まれた。
「こいつら、何処から?!」
「これで確信したぜ。あの中にゴブリン王がいるってな!」
「ああ、間違いないな。見ろ、さっきより装備がしっかりしてる」
ゴブリンたちは相変わらず虚ろな目のまま、同じようなことを繰り返している。
「王を守れ」
「侵入者には、死を」
「こいつらはただ、操られているだけだ。でも操っている者を倒したところで、元に戻るとは考えられないな。僕が思うに首謀者は、頭脳食いっていう怪物だ」
「頭脳食い?」
「うん。体は僕らみたいな感じで頭がタコ。口は小さいけど鋭い牙が生えてるんだ。頭から出てる触手には吸盤があって、その吸盤で相手を捕らえて自我を食らうんだ。食われたら最後、頭脳食いの言いなりになるんだよ。頭脳食いを倒しても、食われた自我は戻らない」
「さっすがチョロ松!何言ってるか、さっぱりだけど」
「あははー。でもさ、そいつをやっつけないと、犠牲者は増えるよね?」
「そういうこと」
「哀れなゴブリンたちのためにも、そいつを倒すぞ!」
「そうだな。見ていて気持ちのいいもんじゃない」
「でもまずは、目の前のゴブリンたちだ」
カラ松の熱線が、チョロ松と一松の剣が、十四松の矢が、ゴブリンたちを倒していく。そんな中おそ松は、こういう狭い場所での自分のたよりなさに、悔しい想いをしていた。
「くっそぉ…!俺も役に立ちたいぜ!」
その時、カラ松の背後から襲いかかろうとするゴブリンに気づいた。
「危ない、カラ松!!」
おそ松の声に慌てて目を閉じるカラ松。振り返るとゴブリンと揉み合う、おそ松の姿があった。
「おそ松!」
ゴブリンを倒そうにも、おそ松と揉み合っている状態では、下手に目を開けない。
「くっ!どうしたら……!エイトシャットアウッ!」
「ぬぁああ!!このおそ松を、なぁめんなよぉ?!」
おそ松はゴブリンからモーニングスターを奪うと、そのゴブリンの体に思い切り叩きつけた。元々殺傷能力の高いモーニングスター、ゴブリンは一撃で動かなくなった。
「おお!やったな、おそ松!」