第6章 Mission
「できません! 先輩を置いてそんな――!」
「心配するな。すぐに追いつく」
菜月と呼ばれた少女は首を振って与えられた指示を拒否した。
そんな彼女に、リーダーの隊士は優しく微笑む。彼らの新しい副隊長がいつもそうして勇気づけてくれるように。
「俺たちを信じろ。――さあ行け!」
だがそれは儚くも彼の最期の笑顔となった。
「……なにをもって信じろと?」
ウルキオラが剣を振り下ろしたその先で、血飛沫が舞った。
ゴトン、と力を失った体が音を立てて沈みこむ。
「あ…………」
「ぐっ……菜月っ! 早く逃げろ!」
事切れた上官に呆然とする少女に、グリムジョーと打ち合っている男が叫ぶ。けれど弾かれたように駆けだした少女の眼前を鋭い刃が通過しそれを制した。
ウルキオラの刀剣の切っ先は少女の胸元をかすめ、白い柔肌に一筋の鮮血を滲ませる。
「ひっ……」
はらりとはだけた死覇装を押さえもせず、少女は間近に迫った死の恐怖に打ち震えた。
「……せめて一撃で殺してやる」
感情を押し殺した瞳で告げる。
だが腕を振り抜こうとしたそのとき、ウルキオラは少女の胸元に釘づけになった。
はだけた死覇装の内側に、見覚えのある花の紋様。
『ジャーン!』
副隊長になったんだ、と笑った彼女が得意げに見せた、副官章に刻まれた花と同じ――
この娘は、彼女の隊の……
「ふく、ちょ……草薙副隊長……」
死を目前にした少女が祈るように呼ぶのは、任務前、緊張のあまり硬くなっていた自分に聖女のような微笑みをくれた人。
いつも優しくて、温かくて。十三番隊に配属されたときからずっと、憧れの人だった。
その人が副隊長になると知り、あんな素敵な人の下で働けるのならこんなに幸せなことはない――そう思った。
「……っ」
彼女を呼ぶ少女を前に、ウルキオラに迷いが生じる。
この娘を斬れば彼女が哀しむ。
だが斬らなければ主の命令に反することになる。
だが
だが――