第4章 Cloudy will be Fine
カッと肩を怒らせれば浮竹は隊長とは思えないほど小さくなって平謝りした。それを見た清音と仙太郎は、互いの髪の引っぱり合いを中断して沙羅と浮竹の間に割りこむ。
「こら沙羅! 隊長はあんたのためを思ってやってくれてるんじゃないの!」
「そんなこと言ったって、私まだ副隊長やるって決めたわけじゃ……」
「なに言ってんだ! ウチの副隊長張れるのなんざオメーしかいないだろ!」
「な……私以外にもいるでしょ! そういう仙太郎と清音だって――」
「あんたじゃなきゃだめなのっ!」
反論の暇(いとま)も与えずにそう言い放って清音は腰に手をあてる。
「あたしや小椿じゃ隊長の副官は務まらないのよ。席位なんて関係ない。海燕副隊長のあとを継げるのは沙羅しかいないの」
ちょっと悔しいけどね、と肩をすくめて言う清音にほかの席官たちも同調して頷く。
「どうして……? 私にはそんな……」
「こらこら。みんなあまり沙羅を追いつめるなよ」
顔を曇らせる沙羅に、浮竹は苦笑を浮かべて隊員たちをなだめた。
「沙羅――副隊長に必要とされる要件はなんだと思う?」
困惑した面持ちで見上げる沙羅に、浮竹は優しい微笑みをたたえて。
「副隊長とは文字通り、隊長を補佐する役割を担う。よって求められるのは隊長が全面の信頼を寄せるに足る人物であり、有事の際は隊長に代わり隊を指揮・監督する能力に長けた者。それは単に霊力の大きさや戦闘技術だけで判断するものではない。……まあ戦闘特化型の十一番隊辺りではまた話が違うかもしれないがな」
「はい……」
浮竹から副隊長昇格の話を持ちかけられた時点で、沙羅自身も護廷十三番隊の掟を再度調べ直していた。
隊訓はこう謳う。隊長格たる者、知略に秀で、人望厚く、いかなる時も物事を大局で捉える視野を有せよ、と。
だからこそ躊躇ったのだ。
私はそんな人格者じゃない。私には副隊長なんて務まらない。そう思ったから、こそ――