第2章 Smile inside of the Mask
目を開くとそこは辺り一面真っ白な世界だった。
視界は深い霧にさえぎられ、数m先ですらもう見えない。
これとまったく同じ光景をつい最近にも見た気がする。
『……沙羅……』
……ああ、そうだ。この声。
現世で見たあの夢の声だ。
哀しそうに私の名を呼ぶこの声を、私は知っている。
知っているのに……思い出せない。
その人の顔も、名前も。
『沙羅……』
ねえ、あなたは誰なの?
どうしてそんなに哀しそうに私を呼ぶの?
返事をしたくても声が出ないの。
体も重くて動かない。
あなたの声に応えたいのに――……
月明かりが射しこむ夜の帳(とばり)の中、まどろみに揺れる沙羅の頬をつっと涙が伝った。
***
《Smile inside of the Mask…仮面の下の微笑み》
初めての微笑み。