第2章 Smile inside of the Mask
「失礼いたします。十三番隊第七席草薙沙羅、日番谷隊長へ先の任務のご報告をいたしたく――」
ノックと共に扉を引いた十番隊の隊首室の中では、乱菊が茶菓子片手にお茶をすすっているところだった。
その彼女は沙羅の姿を見てとるなり、目にも止まらぬ速さで茶菓子を片づけ書類の山ができている日番谷のデスクに顔をうずめる。
「あら沙羅、お帰りー! 隊長なら今隊首会に出席してるわよ。あたしはね、見ての通り隊長の書類整理を手伝ってるトコ! もうやってもやっても減らなくて参っちゃうわ。あっ、今はちょーっと息抜きしてたんだけどね?」
「ふぅん……大変そうね」
乱菊の息抜きの度合いはテーブルの上に散乱している大量の茶菓子のクズが物語っている。
「そうなのよーやっぱ副隊長も伊達じゃないわね。で、どうだった? 報告書は見つかった?」
つい先日「副隊長はラクでいいわよ~」と熱弁していたのは誰だったろうか、と思い返しながら沙羅は報告書の束をどさっとデスクの上に置いた。
「きゃーっ! ありがと沙羅、恩に着るわ!」
「お礼ならウルキオラに言ってよね」
「え? 誰?」
「なんでもない!」
その後もなにかとゴマをすってくる乱菊に苦笑を返しつつ、帰ってきた日番谷に報告を済ませると、沙羅は自室に戻りベッドに沈みこんだ。
なんだかんだ言って一日中現世を駆けずり回った疲れはしっかりたまっていたらしい。
ごろんと仰向けに寝転がると、沙羅は瞬く間に夢の世界に落ちていった。