刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第48章 忍び寄る魔の手
俺はあいつのものだ。
あいつしか好きじゃない。
俺に色仕掛けをしたところで無駄だ。あんたになんか興味はない。
と何度も口から出そうになったが、その度に審神者から恋仲であることを内緒に、と言われたことが頭をよぎり、結局何も言わずに黙り込むの繰り返しだった。
俺が何も言わないのをいいことにこの者ときたら…――
正直この場にいるのも不快で、大倶利伽羅がその場を離れようとすると、すかさず女の手が服を掴んだ。
今まで呼び止められたことはあったとしても、服を掴まれることはなかった。
いつになく強引な態度に大倶利伽羅は顔を引きつらせる。
「待って下さい、大倶利伽羅様!」
「放せ」
「嫌です!放したら大倶利伽羅様はすぐどこかへ行ってしまうじゃないですか!私はもっと大倶利伽羅様と話がしたい…!」
「俺はあんたに用などないんでね」
「審神者様と恋仲だから……審神者様に遠慮されてるんですか」
「…は」
どうやらこの者はもう俺と審神者の関係を知っているらしい。最近はあいつとも話ができていないから知らなかった。