第2章 Début.
「本日のメニューは、"ブッフ・ブルギニョン"。
フレンチの定番と言える品だが、一応レシピを白板に記しておく。
制限時間は2時間。完成した組から出しなさい。
白澤には、前の調理台で調理してもらう。
終わった組から、試食を許可する。自分の皿との違いをよく考えることだ。
では始めるとしよう…、Commencez à cuisiner!」
シャペル先生がそう言うと、生徒達は慌てて作業に取り掛かり始めた。
「細切りしたキュウリ入れる!?」
と創真だけはまだ頓珍漢なことを言っている。
『幸平君』
「お!白澤…」
『琥珀でいいよ』
にこ、と笑いかけると、素直に名前を呼んだ。
隣で恵は目を見開いている。
「じゃ俺も創真でいいよ!」
『ありがとう。初めて君の料理を見るから、
正直とても期待してるんだ。頑張ってね、恵も』
「え、あっ…!うん!」
恵ににこっと笑いかけると、持ち場へと戻った。
さて…、と恵が創真の方を見ると、創真は
「で…、ブッフ…、ブル…なに?」
恵は顔が蒼白になった。
「創真君、あの料理作ったこと…!?」
「いや、ねぇけど?」
恵は頭を抱えている。
「ま要は牛スジ煮込み…みたいなもんだろ?
まぁなんとかなるっしょ。レシピ見てくるわ」
創真が前に行くと、琥珀は調理に取り掛かったところだった。
牛スネ肉は余分な脂やスジを除いて適当な大きさに切る。
玉葱をすりおろし、牛スネ肉に揉み込む。
それからペコロスの皮剥き、ミニキャロットを半分にカットして__。
と、漸く創真からの視線に気づいた琥珀。
「料理の腕は確かなんだな…」
『そう?ありがとう』
ニンニクを包丁で潰し刻む。
牛スネ肉、ゴルゴーニュ産赤ワイン、野菜とローリエを一緒に漬け込む。
その間に切り落とした脂や細切れ牛肉などで牛スープを作る。
牛スネ肉を取り出し、オリーブオイルをひいた強火のフライパンで焼く。
オリーブオイルを更に回しかけ、ワインから上げた野菜類を更に炒める。
ちらりと創真の方を見ると、恵がしっかりやっているようだ。