• テキストサイズ

Suprême.

第2章 Début.


フライパンに野菜類をつけた赤ワインを全て加え、半量になるまで煮詰める。

牛スープ、潰した黒胡椒、ブーケ・ガルニを加え、

牛肉が柔らかくなるまで煮込む…。

さてあとは待つだけだけれど…、と創真達の方を見遣ると、

何やらアクシデントがあった様子。恵の顔が真っ青になっている。

すると創真がシャペル先生のところへ来た。

「予備の食材ってありますか?作り直したいんすけど…」

シャペル先生が予備の食材を渡すと、創真はさっさと厨房台へ戻り、

早速調理に取り掛かったようだ。

『今からもう一度…』

すごいな、と感心しながら、恐らく創真達の鍋に

嫌がらせをしたであろうグループに目を向ける。

『料理人が自分の鍋から離れるなんて…』

創真達は、着々と調理を進めていく。

すっ、と手に取ったのは蜂蜜。

ふぅん、と眺めていると、生徒達が完成した料理を持ってきている。

慌てて皿に料理をよそうと、

落ち込んでいる者、喜んでいる者関係なく、自分の料理を振舞う。

『お疲れ様でした。どうぞ、召し上がれ』

中には自分の皿を持ってきて、アドバイスを求めて来る者もいた。

美味しい美味しいと食べてくれている所を見ると、作ってよかったなと思う。

すると、次審査お願いしまーす、と持ってきたのは創真達だった。

『…』

すすす、とシャペル先生のところへ寄っていく。

「おあがりよ!」

シャペル先生はフォークを肉に当てると、

「柔らかい…。フォークが弾むようだ…」

と呟いた。

「君達のところはアクシデントがあった筈だ。

どうやって完成を?」

創真は、それに得意げにふふん、と笑うと、

「使ったのは蜂蜜。煮込む前の肉に揉みこんで、

下味をつけるときにも加えてみました」

シャペル先生は、ふむ…と唸る。

「蜂蜜には、タンパク質分解酵素プロテアーゼが含まれている…。

それが硬い牛バラ肉に作用し、短時間で柔らかく仕上げることが出来た、か…」

「で、でもどうしてこんな風に蜂蜜が使えることを知ってたの?」

「昔、料理本を見てたらパイナップルの果汁が肉を柔らかくするって書いてあったんだけど、

パイナップルなんて、丸ごと買う機会なんてそうそうねぇからさ」
/ 72ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp