第6章 Tes chaussures.
ぺち、と初め同様小さな手を叩く音がして、課題の終了を告げる。
「そこまで〜。課題は以上で終了です」
ざわざわと教室内にざわつきが戻り、
安心する者と絶望する者がそれぞれ別の脱力をし始める。
「乾シェフ、勝負の判定をお願いします」
タクミが日向子にそう言うと、
日向子は少し悩んでからよろしい、と話し始めた。
「勝者は、…誰もが思いつかなかったアイディアで、
"岩魚"に見事な食感を与えた______」
岩魚、の一言にタクミの顔が強張る。
日向子はそこで一旦言葉を止めると、
「…いや、やっぱり待って下さい」
と二人に背を向けた。
「…よし、決めました。
未知の状況でも"合鴨"という選択肢を見逃さず、
食材選びで差をつけた______」
"合鴨"の一言で顔に光が灯ったタクミだったが、やはり待ったがかかる。
「いや、でもやっぱり…」
その一言に二人がずっこける。
何をやっているんだろうか、この三人は。
『コント…?』
…というより早くホテルに戻らないと次の課題が…。
大丈夫なのかな…、と思っていると、日向子のスマホが鳴った。
「むむっ!?もう、何ですか?今大事な考え事を…」
と日向子はブツブツ言いながら電話に出る。
その瞬間に聞こえてくる小次郎の怒声。
「何やってんだ日向子!お前のグループもう戻らせる時間だろ!」
日向子の顔がどんどん青褪めて行く様子に、
琥珀はやっぱり…と溜め息をつく。
「とにかく早く来いバカ女!」
「ひぃっ!ご、ごめんなさい四宮先輩〜!!
みみ皆さん!急いでホテルに戻りますよ!」
「ちょっ!えぇ!?」
日向子のその台詞を聞いた二人は、
「乾先輩、判定は!?」
と日向子を急かす。
「あぁっ、そうでした!
この勝負…私の預かりとします!
…さぁ大至急バスに乗ってー!
奥の座席からどんどん詰めてー!!」
日向子はさっさとそう言うと、大急ぎで教室から出て行った。
その後ろ姿を見て唖然とする二人。
「んーと…、だってさ」
「な、納得できるかこんなの!
いいか幸平っ、この決着はいつか絶対につけるぞ!」
「いいけど…、どーやって?」