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Suprême.

第6章 Tes chaussures.


「日本料理には"おかき揚げ"ってのがあるだろー?

砕いたおかきを素材にまぶして揚げることで

食感を良くしたり味に意外性を持たせる料理だ。

おかき揚げなら実家で作ったことがあったから…」

「それの応用で柿の種を使って揚げることを閃いたのか…?」

「そーいうこと!」

創真は少し得意気に人差し指を立てた。

「名付けて、ゆきひら流"岩魚のおかき…、!

ゆきひら流、"岩魚のお柿揚げ"だよっ!」

「絶対途中で思いついただろう!!」

わいわいと賑やかな二人を見て琥珀は笑みを零す。

何だかんだ言いながら、ここの二人はいい友人になれると思う。

ふむ…、と日向子は少し目を瞑って考えた。

アルディーニ君は視野を広く持ち、合鴨という食材を見逃さなかった。

一方幸平君は、その類稀なる発想力で

ここにいる誰もが思いもよらなかった一品を作り上げた!

限られた条件と時間の中でも物怖じせず、自分だけの料理を作り出そうとする。

これこそプロとしての気概!

ふふ、と思わず日向子の口端から笑みが溢れる。

今まで何度かこの課題を出してきましたが、

素揚げならまだしも"衣揚げ"をやってのけた生徒は初めてです。

目の前のお柿揚げをもう1度口に運ぶ。

カリッという咀嚼音が耳に心地よい。

柿の種が、旬を迎えた岩魚をぎゅうっと包み込んで

それはさながら、清廉な人魚への情念に満ちた熱い抱擁の様…。

ダメ…、柿の種との愛に溺れてしまう…!

日向子はそっと口元を拭う。

「幸平 創真、田所 恵…、合格とします!」

「御粗末様っ!」

嬉しそうにハイタッチをする二人を見て、

タクミは少し悔しそうに拳を握り締めた。

『合格おめでとう!あの発想力にはびっくりしたよ!』

「おーサンキュー!これでどっちが美味いかだよな〜」

『どうだろうねタクミ?負けたら土下座だけど』

「ふんっ、早く君の土下座が見たいものだな」

「あ?」

バチバチと火花を散らす二人の頭を軽く叩く。

『ほらもう喧嘩しない!』
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