第6章 Tes chaussures.
それを聞いた創真は大きく口角を上げてそれを掴んだ。
「俺達が作る品の鍵になる食材は…、こいつだっ!」
「え…!」
「そっ、それは!私のお茶請けー!!」
悲痛な日向子の叫びを後ろに創真は掴んだのは柿の種。
『柿の種…?』
柿の種と岩魚…。それに山菜…。
「つーわけで俺らまた外に出るから!
あ、これ預かっといてくんね?」
創真はタクミに柿の種の種を押し付けると、
恵と共にドタドタと教室を去って行った。
嵐が去ったような教室で、日向子は柿の種を寂しそうな目で眺めた。
『何作るんだろう…』
「さあな、全く、読めないやつだ」
タクミはイライラと怒りつつも、渡された柿の種はしっかりと持っている。
そういうところがタクミの好きなところだ。
創真が教室を出ていってから暫くが経ち、
その間にも多数の生徒がやり直しを言い渡されていた。
もう残り時間はあと20分ほど。
ここからのやり直しなど実質退学と同じようなものだ。
床に蹲り泣き出す生徒や、がっくりと放心する生徒が増えてきた中、
創真達は一向に戻ってこなかった。
時間が経つごとにタクミはそわそわと落ち着きをなくしている。
「まだ戻らないのか幸平は…!残り時間20分を切ったぞ…?」
『とりあえず落ち着いたら…?そのうち戻ってくるよ』
うろうろとタクミが歩き出したところで、
教室のドアを大きく開け二人が息を切らして戻ってきた。
「幸平…!」
タクミは創真の姿を認めると、開口一番に大声を上げた。
「遅い!残り時間はもう15分しか無いんだぞ!
俺と闘いもせず失格するつもりか!!」
グシャッ!と勢い余って柿の種を握り潰すタクミ。
『あ、コラ、タクミ!手!』
タクミは自身の手によってクシャクシャになった
柿の種を見て、あわあわと焦り出す。
「ああっごめん!ち、違うんだ幸平、これは…!」
「あー気にすんなよ。手間が省けた、サンキュー」
『…?手間が…?』
…ああ、なるほど。
柿の種と岩魚、それにその抱えている鶏卵…。
おかき揚げの様なものを作るつもりなのか。