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Suprême.

第6章 Tes chaussures.


グッとタクミが握り締めたコックスーツの袖には

"Trattoria Aldini"の文字。

「"客の前に立ったこともない連中に負けるつもりはない"だって?

そんな台詞は俺を倒してから言ってもらおう。

アルディーニとゆきひら…、どちらが格上か教えてやる!」

タクミのその台詞で火がついたのか、創真はぎゅっとはちまきを締めた。

「おもしれー…、かかってきな!」

創真が調理台に戻ったのを見て、タクミもギラついた顔のまま戻ってくる。

タクミはそのままメッザルーナを取り出し、青柚子と青唐辛子を刻んでいく。

『合鴨胸肉焼き上がりまであと7分』

「よし、その間にサルサを仕上げる。Tritare完了まであと10秒」

『了解。うるかはあと5秒で出来る』

タクミが回したメッザルーナを受け取って、大葉と青葱を刻む。

完成した大葉と青葱のペーストをタクミに流すと、

タクミはそれと柚子胡椒、うるか、ごま、醤油で

和風サルサ・ヴェルデを完成させた。

焼き上がった胸肉を切り分け、サルサを上から掛ける。

刻んだ白髪葱を上に乗せ、容器に入れたサルサを添え

さつきを飾って完成だ。

タクミが得意気に日向子のところへ向かう。

「一番乗りですね」

「軽快さこそがイタリア料理の持ち味ですから」

タクミは笑って、日向子に料理を手渡す。

「Buon appetito.」

日向子は笑って鴨肉を口に運ぶ。

野性味あふれる合鴨の香ばしさ。

そして鼻に抜けるような清涼感が味の格調を高めている。

雄々しさと気品が重低音となり

お腹の奥まで響く…それはまるで

合鴨の歌うアリア…。

ああ…、この鴨になら抱かれたい_________。

「!?おい…、あの緑色のペースト状のソース!

あれって、"サルサ・ヴェルデ"じゃないか!?」

「何考えてんだ…、テーマは日本料理だぞ?

あんなものだしたら失格に決まって…」

何を考えてるんだはこっちのセリフだ、と琥珀は笑った。

珠宝席がついてるんだよ?そんな馬鹿な真似するわけがない。

「いえ…、このソースは塩蔵アンチョビではなく鮎の塩辛…、

"うるか"を主体に作られています!」
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