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Suprême.

第6章 Tes chaussures.


釣り糸を水に沈めて、琥珀は静かに腰掛けた。

ぼうっと宙を眺めながら、時々竿を揺する。

先程タクミから手渡されたメモに目を通すと、

"青柚子 青唐辛子 大葉 葱"の4項目が。

『全部緑の野菜だなぁ…。青柚子と青唐辛子は柚子胡椒かな…?』

なんて考えていると、クイクイと竿に反応があった。

慌てて力を込めて引き揚げると、そこにはお目当ての鮎が。

それをバケツにいれると、琥珀はお尻を払って立ち上がる。

『じゃあタクミが戻ってくる前にさっさと素材集めようかな』

ぱっぱっと手際良くそれぞれの素材を見つけ、

その中でも一番質の良い物を選ぶ。

ついでに彩りになるだろうと、遅咲きのさつきを一輪摘んでおいた。

全て集め終えて、手持ち無沙汰になってしまったところで、

後ろからタクミの声がかかった。

「終わったのか?」

『あ、おかえりなさい。終わったよ、鮎と、メモの物も』

バケツとカゴの中のものを見せると、タクミは頷き、

「戻ろうか」

とさり気なくバケツを持った。

『わ、いいよ。そんな重くないし、自分で持つよ』

「何言ってるんだ?大事なsignorinaに荷物なんか持たせられるわけないだろう」

『…、ありがとう』

タクミがあまりにもサラリと言うものだから、なんだか変な気持ちになってしまう。

赤らんだ頬をむず痒そうに搔く琥珀に、タクミは笑って揶揄う。

「少しは意識したか?」

『うるさいな。格好いいと思った自分が馬鹿だったみたい』

行きと同じような他愛ない会話をしていると、

ちょうど反対方向から創真たちが歩いてくるのが見える。

玄関先まで来たとき、タクミが創真に気づいてしまった。

創真はタクミの姿を認めると、にやっと意地悪く口角をあげた。

「厳正なる審査を___」

「だまれ!だまれよ!!」

顔を真っ赤にしたタクミは、慌てて室内に入り、

馬鹿にしたように辺りを見回した。

「ふん!キミたちも魚か?全くどいつもこいつも、

テーマが和食だから魚料理っていうのは

発想の幅が狭いんじゃないか?」

「何だぁ?えらそーに、んじゃてめーは何を…」

創真が苛ついたように言うと、タクミは自信有りげに食材を出した。

「ふふ、わかるか?合鴨だ!」
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