• テキストサイズ

Suprême.

第6章 Tes chaussures.


「…それにしても本当に久し振りだな、琥珀」

森の中を、二人は呑気に歩きながら談笑していた。

まるで散歩気分だ。

『本当だよ!私がフランス留学してたときからだから…、大体半年ちょっと?』

「もうそんなになるのか…。道理で琥珀も見ない間に大人っぽくなった訳だな」

タクミは琥珀を愛おしげに眺めて頭を撫でる。

『半年ちょっとでそんなに変わらないでしょ』

「変わるさ。前より綺麗になった」

それを聞いた琥珀は、可笑しそうに笑う。

『でた、イタリア男はすぐそういうこと言う』

「そんな風に思われていたとは心外だな。琥珀にしか言わないのに」

『はいはい』

ヒラヒラと軽く手を振ってあしらうと、タクミはその手をパシッと握る。

『へ、』

ちゅ、と軽いリップ音がして、目の前にはしてやったり顔のタクミ。

「わかってくれたか?琥珀」

『…平気でそういうことする!今はそんなことする時間じゃないでしょう』

「良いだろ、本当に久し振りなんだから」

ふふ、とタクミは心底楽しそうに笑って琥珀の髪を撫でる。

でも二人は恋人関係ではない。

友達以上恋人未満、それでもキスやセックスはする。

セフレかと言われれば気持ち的にそうではない。

なんとも不思議な関係だ。

『何作ろうか?創真より美味しいもの作るんでしょう?』

「勿論だ。絶対にあいつをぺしゃんこにしてやる」

『じゃあ私は手伝うだけだよ、私が作ったら絶対に勝つもの』

ふふ、と琥珀が自信有りげに笑うと、

タクミはそれもそうだ、と笑い返した。

『兎、鶏…、合鴨、鹿…、あ、豚もいるね、小さいけど』

ふむ…、とタクミは顎に手を当て、レシピを考えている様子。

タクミはよし、と小さく呟くと、琥珀に釣り竿を押し付けた。

『え、竿?』

「これで鮎を釣ってきてくれ。それが終わったら、なるべく近くでこの山菜を。オレは合鴨を仕留めてくる」

とタクミは小さなメモ用紙を琥珀に渡し、

腕まくりをすると林の奥の方へ消えて行った。

『了解。気をつけてね〜』

と声をかけ終わる頃にはタクミの姿は完全に消えていた。

『それじゃあ鮎を釣ってこようか…』
/ 72ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp