第2章 Début.
「最後に、本日より編入する生徒を1名紹介します」
司会の言葉に、二人は首を傾げた。
『あれ?誰か採ったの?』
「いいえ、私の所では採っていないわ。別の試験じゃないかしら…」
琥珀は興味深そうに壇上に立つ編入生を見ている。
「いやー、なんか壇上とかこそばゆいっすねー」
えへへ、と頭を掻きながら笑う編入生…。
『あれ…?』
その編入生は赤髪だった。
確かえりなが話していたのも赤髪の…。
チラッとえりなを見るが、何やら目を瞑って考え事をしている様子。
まあいいか、と琥珀は再び編入生に視線を戻した。
「いいから、さっさとお願いします…!」
司会の女生徒が苛立った様に続きを促す。
「じゃあ手短に…。二言三言だけ」
と編入生が言うと、隣で凄い声が聞こえた。
『わっ、びっくりした…!』
隣を見ると、えりなが凄い顔で編入生を見ている。
やっぱり蹴ったっていう編入生だったのかな。
「えっとー、幸平 創真って言います。
この学園の事は正直、踏み台としか思ってないです。
思いがけず編入することになったんすけど…、
客の前に立った事も無い連中に負けるつもりは無いっす。
まあー、何が言いたいかと言うと…
要するに、入ったからにはてっぺん取るんで」
『!!!』
思わず目を見開く。自然と口角が上がるのが分かった。
「3年間、よろしくおなしゃーす」
創真はそう言うとぺこっと頭を下げた。
と同時に生徒達からの物凄いブーイングが起こる。
当の本人は気にする事も無く、そのまま控え幕に入って来た。
「はー、噛まずに言えた」
と胸を撫で下ろしている創真と、えりなの目が合う。
「…おお!試験の時の!えっとー、薙切だったよな?」
えりなはきっ、と創真を睨みつける。
「いや緊張したわー、ガキの頃から表彰状とか無縁だったし…。
俺どうだった?変じゃなかったか??」
えりなはそれを聞きながらワナワナと震えている…。
「そんなことはどうでもいい!!幸平君、何故君が此処に!?」
と、えりなは創真に詰め寄る。
「いや、何故って…、ほい」
と創真は1つの封筒を差し出した。
「合格通知が届いたら、そりゃ来るだろ」