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Suprême.

第5章 Connaissance de la viande.


一口、審査員がそれを口に運ぶと、

まるでスイッチが入ったかのようにそれぞれがかきこみだした。

「!?」

えりなも信じられない、といった様子で身を乗り出す。

『うわぁ凄い、そんなに美味しいんだね』

後で食べさせてもらおう、なんて考えつつ

審査員の感想を聞いていくと、なにかご飯にも秘密がある様子。

食えば食う程腹が減るような丼だなんて、

そんな悪魔的な皿にする秘密があるのか。

「その丼のご飯は、手製のねり梅を切り混ぜたさっぱり梅風味飯だ!」

審査員達は最後の一口が終わると、口々におかわりを要求しだす。

『凄いよえりな!なかなか食戟でおかわりなんて聞かないよ』

琥珀が半ば興奮気味にそう言うと、えりなは悔しそうに唇を噛む。

「ロティ丼も見事やったけど…、より箸が進むんはこっちの丼…!」

その一言に、郁魅は初めて自分の皿を見る。

そこには、白い皿の上に少しずつ残されたガーリックライス。

舞台の上では、創真が郁魅に自分の丼を渡している。

『えりな、幸平君ってそんなに遠月に相応しくない?』

そこで、司会の声が響いた。

「何とぉ!勝者は…、幸平 創真ー!!!」

えりなは拳を握り締めると、琥珀を見据えた。

「あんな三流の料理人なんて、遠月には相応しくありません。

そもそも、食戟に値引き品の質の悪い肉を持ってくる時点で論外なのよ」

『そうかな。料理って食材云々よりも味が美味しいかどうか、

人の心を動かせるかどうかだと思うけど』

「…もともと貴女とは、そういった価値観が合わないのよ。

相容れないのはわかっていたわ」

琥珀は少し苦笑いを零して

『そうだね、本当にそういう面では合わないもんね』

「それでも貴女の料理の才能は本物だわ。

そこは尊敬しているの」

『はは、有難う』

えりなは少し俯くと、

「それじゃあ、失礼するわ」

と会場に一瞥を寄越して部屋を出ていった。

『私も創真のところ行こうかなぁ』

琥珀もえりなの後を追うように部屋を出た。
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