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Suprême.

第5章 Connaissance de la viande.


「丼研の部費ってあといくら残ってんの?」

と創真が尋ねると、寛一は言いにくそうに

「あのーそれが…」

「…?何だよ先輩」

寛一は冷や汗をかきながら続ける。

「あのな…、部費の残りが…、

俺の全財産も合わせてあと…」

と寛一が持ってきたお金を覗き込む。

創真と琥珀はぎょっとしたように声を出す。

「あと…たったこんだけ?

試作に使う食材買うのすら危うくね…?」

と創真はものすごい顔で何処かに走り去って行った。

『あれ?どこ行ったのかな…。

ま、まあ、いざとなったら私も用立てるし、

なんなら私の調理室から試作用の

食材持っていってくれても全然構わないから』

一応創真に鍵を渡しておこうかな、などと考えていると

寛一が奥から何やら段ボール箱を持ってきた。

『それは…?』

「過去のレシピ集だ。

いっぱいあるから、白澤も手伝ってくれ」

『あぁ…、なるほど』

と琥珀も一緒に段ボール箱を運ぶ。

だいたい運び終えたところで、

悲壮な顔をした創真が戻ってきた。

『あ、おかえりなさい』

「おお幸平!丼研の過去のレシピ集を集めてみたんだ!

使えるものがあるかもしれねぇ!」

それを聞いた創真は、悲壮な顔から一転して

やる気に満ちた顔でやりますか!、と笑った。

______それから十数分して、1品目の丼が出来上がった。

「あがり!味見頼みます!」

と創真に渡されたのはカツ丼。

「豚の代わりに牛肉を使ったビフカツ丼だ!

丼研レシピをさらに工夫して鶏とうずらを混ぜた卵で

とじたからコクが深まったはず…!どうだ!?」

琥珀と寛一はそれを口に運ぶ。

『美味しいと思う』

「悪くはねぇと思うが…足りねぇ!

口に入れた時のインパクトが…。

肉魅の品はこう…舌にガツンとくるんだよ!」

「ガツンと…、なら脂だ!」

と創真は少し考え、調理に取り掛かる。

「砂糖と牛脂で甘く焼き上げ卵を落としたすき焼き丼!」

『美味しいと思う』

「ダメだ…!上品な旨味が出てない!」

「じゃあ牛脂を減らして代わりに…」

と翌日も試作を重ねたが、

いいレシピも思いつかないままいたずらに時間は過ぎていった。
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