第5章 Connaissance de la viande.
作戦会議と称して、創真達は研究室に集まっていた。
「あれから一晩、俺もじっくり考えてみた。
肉魅は肉、特に牛肉のスペシャリストだ。
だったらこっちは牛に拘ることはねぇと思う。
…例えば、親子丼だって鶏肉、今回のテーマに合うんだ
。
出来るだけ肉魅と被らない品の方がいい…」
寛一の言葉に、創真はなるほど…と唸る。
「なるべく変わり種か…。
琥珀は好きな丼とかあるか?」
と急に話を振られた琥珀は、え?と声を出す。
『私?丼ね…うーん…。お肉じゃないけど…、
ふぐのみぞれ丼に卵黄を落としたのが好きかな…』
むむ、と考えながら言うと、
創真はそれ美味そうだな、と笑った。
「そだよ、海鮮丼って手もあったのに…。
幸平が肉で勝負するとかいうから…」
とまたしおれ始めた寛一に、
「もう勝負内容は決まったんだからぐじぐじすんなよな〜」
と創真は呆れたように言った。
「お前は肉魅の強さを分かってねぇんだ!!
もし、A5の牛肉でも出されたりしたら勝ち目はねぇ!!」
「英語…?English?」
と必死な寛一とは正反対な創真に、琥珀は少し苦笑する。
『A5っていうのは、牛肉の質を決めるランクの事よ。
牛肉のランクを決めるのには2つの等級を使うの。
1つは歩留まり等級。これがAからCの3段階。
これは、牛肉1頭からとれる枝肉の量で決まるの』
「枝肉…?」
と創真は首を傾げる。
『枝肉っていうのは、内臓や皮や骨を取り除いた肉のこと。
簡単に言えば、牛1頭のうち食べられるところってことね。
この食べられるところの量で決まるのが歩留まり等級。
もう一つが肉質等級。これが5から1の5段階。
これは脂肪交雑、肉の色沢、肉のしまりときめ、
脂肪の色沢と質の4項目についての評価で決まるの。
この2つの評価を合わせて牛肉のランクを決定するのね。
最高ランクをとった牛肉が、A5の牛肉ってわけ』
「難しいんだな〜…」
と眉を顰めたまま創真は唸る。