• テキストサイズ

Suprême.

第5章 Connaissance de la viande.


琥珀と目があった郁魅は目を見開くと

慌ててこちらに駆け寄ってきた。

「琥珀様!?

どうしてこの様なところへ…」

あたふたと言葉を選ぶ郁魅に琥珀は苦笑すると

『彼の付き合いで見学にね』

と視線を隣へ移す。

はぁ…、と不服そうに郁魅は創真を見上げる。

『彼女は水戸 郁魅さん。

ミートマスターの異名で知られる有名人よ。

成績が優秀でね、特に肉料理の成績は

A評価以外取ったことがないと噂だわ。

肉への造形の深さは学年でもトップクラスね』

へぇ、と創真は品定めをするように郁魅を見る。

「そんなに褒めて頂けるなんて光栄です…」

と郁魅は照れたように笑う。

では、と郁魅は目つきを変えると寛一に詰め寄った。

「価値ある肉に、総ての食材はひれ伏す!

…あんたがどんな品を作ろうと、

あたしの超高級肉には勝てねぇんだよ…」

悔しそうに唸る寛一の横から創真が口を出した。

「食材の値段だけで喜んでちゃ、

料理人の名折れだと思うぜ」

あ?と苛ついた様に聞き返す郁魅に、

創真は先輩、と寛一の肩を叩いた。

「この食戟…、俺に任せてくんねぇかな」

え?と間の抜けた声を出す寛一。

「…なんだよあんた。琥珀様のお付きだろ?

部外者は引っ込んで…」

と、何かに気付いた様子の郁魅は、

創真の顔をまじまじと眺める。

「あんた…、編入生?始業式の…。

…あんたとは話してみたかったんだ…。

他人の食戟にしゃしゃり出ようとするなんて、

随分腕に自信があるんだねぇ?」

創真は余裕の笑みを浮かべて、

「なんならそっちの土俵…、

肉料理対決でもいいけど?俺、勝つし」

「んじゃてめぇ…、あたしに負けたら

遠月から出ていくか?」

少し黙った創真を見て、郁魅はケッと嘲笑った。

「その度胸もねぇならデカい口叩くんじゃ…」

「あぁいいぜ?」

と創真は郁魅に被せるように言う。

驚く郁魅を他所に、創真は代わりの条件を考える。

「そのかわり俺が勝ったら、んーそうだな…、

お前丼研入れ」

郁魅だけでなく、寛一まではぁ!?と叫ぶ。

「丼研入って、丼文化の発展に貢献しろ」
/ 72ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp