第5章 Connaissance de la viande.
しばらく野菜の収穫をしていると、
不意に入り口の方が賑やかになった。
「あっ!琥珀ちゃん、おはよう!」
と笑って挨拶をしてきたのは恵。
『おはよう恵。恵も呼び出されたんだね』
と笑いながら入り口の方へ向かう。
と、そこには創真や悠姫。
「おはよ〜琥珀!」
「お、琥珀も来てたのか!」
と琥珀に気づいた二人が声をかける。
『おはよう二人とも』
と笑って、収穫した野菜をカゴに入れる。
一色先輩は恵から色のいいトマトを一つ取って、
創真に勧めていた。
それを横目で見ながら、また野菜の収穫に戻る。
すると隣に、誰かがしゃがみこむのが見えた。
ふと隣を見ると、創真だった。
「元気ねぇじゃん、どした?」
と顔をのぞき込んでくる。
『え、』
と間抜けな返事をしたあと、琥珀は気まずそうに
『あぁ、いや、なんでもないの』
と苦笑して見せた。
「そうかぁ?」
と片眉をあげて、創真は野菜の収穫を進める。
『ありがとう、』
「おう!体調悪いなら無理すんなよ〜」
まさか元気がないことを気に
留めてくれるとは思っていなかったから、
琥珀は少し、むず痒い様な気持ちになった。
すると、向こうで恵が
「みんな〜!朝ごはんですよ〜!!」
と声をかけているのが聞こえた。
「だってよ。行こーぜ!」
『あ、うん』
先程一色先輩にあんな態度を取ってしまったために
少し気まずい気持ちを抱えて創真の後に続く。
「お、田所が作ったのか?」
と創真は軍手を脱ぎながら重箱を覗く。
「うん、お腹空いたでしょ?どうぞ」
そこには綺麗に並べられたおにぎり。
わぁっ、と女子軍から歓声があがる。
「なるほど…、田所ちゃん特製三種のおにぎり、だね」
「いいねいいねぇ!!畑仕事の後のおにぎり!!」
「いっただっきまーす!!」
と悠姫が嬉しそうにおにぎりにかぶりつく。
「ぷはーー!!美味しい!!!
これ、ネギ塩ダレだね!!
さっと茹でた鶏ささみにネギ塩ダレを和えて、
おにぎり表面にもタレが塗ってある!
塩っ気が食欲をそそるわぁ…」
と美味しそうに食べる悠姫の隣で、
「身体動かすと、塩味が恋しくなるのよね」
と涼子も笑う。