第3章 Vierge Marie.
大きく扉が開いた向こうには、幸平創真。
あ、と小さく呟いたきり固まってしまっていた。
『……』
「……」
お互いに何も言葉を発せず、ただ見つめ合う時間が過ぎる。
『え、っと…』
と琥珀が戸惑いがちに声を出すと、
創真ははっ、と我にかえったような素振りを見せる。
「あ、いや、その」
『今は女子の入浴時間だよ…』
と引き気味に言う。
『それに、せめてソレ…タオルで隠すなり何なりしてよ』
と、創真のソレを指差しながら言う。
「あっ、わりぃ!!!」
と創真はバタンッ!と扉を閉める。
『すぐに出るから、部屋で待ってて。
出たら呼びに行くよ。何号室?』
「え?あぁ、わりぃな…。303号室だ」
『あぁ隣だね。了解』
じゃ、お願いします…と気まずそうな声をして
創真はそそくさと出ていったようだ。
ふぅ…、と息をついて、湯船から立ち上がった。
身体と髪を丁寧に拭いて、部屋着に着替える。
自分用のドライヤーで髪を乾かしながら、
先程あった事を思い出す。
『いやまさかお風呂覗かれるとは思ってなかったな…』
テンパってしまって、思わず冷たい言い方になってしまった。
お気に入りのヘアオイルを髪に塗って、
スキンケアを一通り、保湿リップを唇に塗って完成。
自室に戻るついでに、創真の部屋をノックする
「はーい」
『私だけど、お風呂出たから入ってね』
と、ガチャッと扉が開いた。
「琥珀!その、さっきは…本当にごめん!!」
出てくるなりがばっと頭を下げた創真。
『や、気にしないでいいよ。大丈夫だから』
へへ、と笑いながら手を振ってみせる。
創真は顔を上げると、じっ、と琥珀の顔を凝視する。
『?なに??』
「いや…、ほんと白いなーと思って…」
そう?と首を傾げながら部屋の鍵を開ける。
『早めに入りなよ。多分歓迎会的なのあると思うから』
創真に手を振って自室に入る。
がらっと窓を開けて、冷蔵庫に常備してある
バタフライピーとレモングラスのアイスティーを飲む。
レモングラス特有の爽やかな香りを楽しみつつ、
明日から騒がしくなりそうだな〜、と苦笑しながら考えた。