第3章 Vierge Marie.
「決まってるだろう!?極星名物、入寮腕試しだよ!
一つ、入寮希望者は1食分の料理を作り、
その味を認められた者のみ入寮が許される。
一つ、審査は寮長に依る。
一つ、食材の持ち込みは自由とする」
創真は納得いかなさそうに言った。
「聞いてねぇよ!食材なんて用意してねぇし!!」
「じゃあ不戦敗だねぇ…、腕を見ずには極星の敷居は跨がせない」
なっ…、と創真はまだ何か言いたげに唸る。
「てことは今夜俺は…」
「そりゃ野宿だろう」
「っざけんな!!4月の夜の冷え込みなめんなよ!
そうでなくても、疲労と空腹でくたばりそうなんだぞ!」
ふみ緒はそんな創真を見て、はんっと鼻で笑った。
「腕試しは絶対だ、諦めな。
厨房には余り物の半端な食材しか残ってないしね。
今日は日が悪かったと…」
「その余り物は使ってもいいってこと?」
ふみ緒は訝しげになに…?、と呟く。
「やるよ、腕試し。厨房はどこだ?」
琥珀は少し眉をあげた。
今日の授業でも思ったけれど、
創真は限られた状況での対応力が優れている。
ふみ緒はこっちだ、と創真を厨房へ案内する。
ふみ緒は厨房へ向かいだした足を止めて、こちらへ向いた。
「あんたはさっさとご飯食べて休みな。
今日は始業式もあったんだから、疲れただろ」
『うん‥、確かに。そうさせてもらいます』
じゃあ頑張ってね、と創真に手を振ると、
琥珀は自室へ戻る。
自室へ入り扉をぱたん、と閉めると琥珀は
へたりとその場に座り込んでしまった。
『今日も疲れた…』
ふぅ、と息を吐き出しベッドに座ると、自室にある冷蔵庫から
お手製のデトックスウォーターを取り出し口に含む。
きっと創真はさらっと合格するんだろうな、と考えながら、
着替えを持ち風呂場へ向かった。
から、と戸を開けるとそこには髪を乾かしている恵。
『あ、恵〜。ただいま!』
「琥珀ちゃん…!今帰ってきたの?」
『うん、色々あって遅くなっちゃった』
恵と話す片手間に、いそいそと服を脱ぎ浴室へ入る。
身体や髪を入念にケアし、ゆっくりと湯船につかる。
『ふ〜…、今頃創真は合格してるかな』
ふふ、と笑いながら縁に顎を置くと、
がらっ、と浴室の扉が大きく開いた。
『‥え?』