第3章 Vierge Marie.
キキッ、と音を鳴らして車が停まった。
『着いたよ』
と声をかけ車を出ると、其処には不気味な建物。
緑の蔓が巻きつき、薄暗く嫌な雰囲気がする。
極星寮、と書かれた表札を見て、創真は小さく
「マジか…」と呟く。
ギィ、と不気味な音を立てて扉を開くと、薄暗い室内。
「あの〜…」
と創真が声を上げると、何処からか真っ黒で
芳ばしさを孕んだ煙がゆっくりと降りてくる。
「煙…!?火事か!?」
と慌てている創真の隣で、琥珀はまたやってる…と溜息をついた。
そして追い打ちをかけるように、地面が揺れる程の大きな音。
ガチャンガチャンと煩い音をたてている。
「地震…?」
更にドドドドドドド、と物凄い地響きが迫ってくる。
「うさ子!鴨助!鹿乃進!!!
みんな、逃げちゃだめぇぇ!!!」
と半狂乱で鳥獣達を追いかけ回す少女、吉野 悠姫。
すると、金色のパイプから年配の女性の声が聞こえる。
「こらぁ!116号室!!ジビエを部屋に入れるんじゃないよ!!
次やったら、あんたの全身の皮を剥いでやるからね!!」
怒られた悠姫はすみませーん!!と叫びながらジビエを追いかけて行った。
「そして208号室!!また勝手に空き部屋を燻製室にしたね!!
あんたをスモークチップで燻してやろうか!?
それから205号室!!もし床が抜けたら、あんたの土手っ腹にも穴開けるよ!!」
漸くパイプからの声が静まると、ギシ、と音を立てて声の主が現れた。
「入寮希望の編入生、幸平 創真だね?
あたしが、ここの寮母大御堂 ふみ緒だ。
極星のマリア…、ふみ緒さん。とそう呼びな」
少し引き気味に顔を青くしている創真を余所に、
『あっ、ふみ緒さん。ただいま〜!』
「おや、今帰ってきたのかい。
もう外は暗いじゃないか、もっと早く帰って来られないのかい?」
『いや〜今日は十傑の会議に出なきゃいけなくって… 』
たはは、と頭を掻きながら琥珀は和やかに帰宅の挨拶をしている。
「それであんた、食材は何を用意したんだい?」
「はぁ?食材って、何の?」