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Suprême.

第3章 Vierge Marie.


コツコツ、と廊下に靴音が響く。

十傑の会議に出席していたら、随分と遅くなってしまった。

今から徒歩で寮に帰宅するのは危ない___ということで、車の手配を新戸 緋紗子に頼んだ。

「私は新作料理の試作をします。

それじゃあ、また明日ね」

とえりなは調理棟へと去って行く。

緋紗子に車の手配を頼んでしまったお詫びを伝える。

『うん、頑張って。緋紗子もごめんね、仕事増やしちゃって…』

「いえ!琥珀様も、どうかお気をつけて」

『ありがとう』

と手を振ると、車に乗り込んだ。

琥珀の住んでいる寮は、校舎からとても遠い。

校舎を出るのが遅いと、寮に着くのはすっかり夜、なんてのもザラにある。

窓の外を見ながら車に揺られていると、

見覚えのある赤髪を追い抜いた。

『えっ、止まって!』

思わず声を出し、車を停止させる。

「白澤様!?」

『ちょっと待ってて』

そう言うと、車を出る。

「なんだぁ〜?急に止まりやがって」

と、後ろの赤髪…、創真は訝しそうに車を見ている。

『こんなところでなにしてるの?』

と声をかけると、創真はうわっと声を上げた。

「琥珀!?どうしたんだよ、こんなとこで…」

『それはこっちのセリフ。この先に用?

もうそろそろ日も落ちるし、良かったら乗せていってあげるよ』

「お、本当か?寒いわ腹は減るわで

クタクタだったんだよ〜、助かったわ!」

と創真は喜んで車に乗る。

『どこに行くの?この先はほとんど何もないはずだけど…』

車を発車させるよう頼んで、行き先を聞く。

「あぁ、極星寮ってとこに入寮する予定なんだよ」

『ああなんだ、行き先は同じみたいだね』

「琥珀も極星寮なのか?」

『そうだよ。寮も一緒だね〜』

しばらく走っていると、辺りはすっかり暗くなっていた。

『日が沈むのはまだ早いから、

帰りが遅くなる時は気をつけてね。ここら森ばっかだから…』

猪とか鹿とかそこらへんも出るからね、と付け足せば、

創真は若干顔を引き攣らせていた。
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