第10章 目指すのは
◆◆◆◆
「ふぁぁ…眠い。
有島さん、何時着きます?」
「何時着きます?じゃないよ。
偶には運転変わってよ。」
有島は不貞腐れ乍ハンドルをきる。
「だって僕免許持ってないですもん。」
「確かにそうだけど出来るでしょ?」
有島は疲れたらしく、ハンドルから両手を離した。
「えっと…有島さん?
それは異能で運転してる…訳では無いですよね?」
少し顔を青くし乍業が問う。
「うん。僕の異能は幻想を見せるだけ。
こんな高い技術は持ち合わせてないね。」
「あーもう!じゃあ僕がやりますから!」
半ば諦め気味の業が強制的にハンドルを握る。
「あ。危ない。」
危機感の全く無い言葉の直後、業はハンドルを大きく右にきった。
「危ない。じゃないです。
はぁ………早く奏音と合流したいや。」
その後もぶつくさと独り言を云い乍、目的地まで車を走らせた。
「よし。着きましたよ。
戦闘が始まるでしょうから準備を。」
そう云って業が車を停めた場所は、
ポートマフィア本部ビルの目の前だった。
明らかに喧嘩を売っている様な停車位置に有島も苦笑する。
「まぁその位の方が良いか。」
その一言で業と有島は正面に向かって走っていった。
◇◇◇◇
「奏音〜。何処にいるんだい?」
太宰は広い回廊をゆっくりと歩いていた、
『此処だよ〜。上、上っ!』
太宰が上を見上げると、奏音は天井に張り付いていた。
「何をやっているんだい?」
『中也にやられた。治、悪いんだけど中也見つけて触ってきて、?』
「何故そうなったの?」
『……私が罪を軽くしたからだと思う。
あぁ、成瀬の、ね。』
その言葉で太宰の動きがピタリと止まる。
「成瀬だって?また彼と接触したの?」
『お、治。怖いから。顔が怖いよ…』
奏音は満更でも無いようで、少し身体を震わせていた。
『もう。みんな嫌な感じ。
異能力───四鏡、大鏡。』
遂に奏音は異能を使ってその場から姿を消してしまった。
「……成瀬。あの男は怪しい。
矢ッ張り安吾に調べて貰った方が良さそうだね。」
そう云って太宰もその場から去って行った。