第6章 過去に押し流されて
─────それから二年程の年月が経った頃。
夜の帳もすっかり落ちたヨコハマの街から外れた山奥をある男が靴を鳴らして徘徊する。
その隣には金髪が闇に映える少女が。
「…ほんとに此処なの?
リンタロウみたいに薄気味悪い。」
「エリスちゃんそれは流石に酷い…
否、でも可愛いから許す!」
エリスに罵られた鴎外は、鼻下を伸ばし乍デレる。
「…行くよ!」
呆れたエリスの一声で無言になって歩き出した。
防犯カメラや張り巡らされたセンサを見事に潜り抜け、鴎外らは施設の中心核まで足を進める。
すると、銅褐色に紅眼の少年と、その後ろからもう一人の少年が歩いて来る。
「防犯カメラやセンサを潜り抜けるなんてやるじゃん。ねぇ、業。」
「えぇ…そうですね。」
そう云って業は一歩下がった。
……筈だった。
空を切る様な音と共に、鴎外の首元には刃が向けられる。
しかも、業の身体は"後ろ"にあって、だ。
「い、何時の間に後ろに…!」
流石の鴎外も狼狽える。
「…答える必要、あります?」
「リンタロウ!奏音って子はどうするの!」
突如、エリスが焦り乍問うた。
その瞬間、業と有島の動きが止まる。
「…何故、奏音の名を知っている…!」
業の刃を持っている手に力が入り、刃が鴎外の首に食い込む。
「何故って…答える必要があるのかな?」
鴎外はしたり顔で答える。
「…ッ……」
自分の云った言葉がブーメランの様に返って来た業は、返す言葉が見つからない。
「業、一度離れよう。話を…する必要が有りそうだね。」
有島は業の袖を引いて一歩退く。
「鴎外さん。僕らは話がしたい。良いですよね?」
「あぁ。此方も話がしたい。君は…」
「僕は有島。で、此方が業。
以後お見知り置きを。」
そう云って有島は微笑んだ。
◇◇◇◇
「…成程。貴方は奏音を助けに来た、と。
しかも奏音は自分の子供だと云うのですね?」
有島は顎に手を当て、考え乍問う。