第1章 出会いと始まり
朝日の登る海岸に背を向けて二人の少年が佇んでいた。
その背中は何とも云えぬ虚しさや少年等の抱える残酷な状況を物語っていた。
そして海岸線から見える地平線には煌めきを放つ太陽が顔を出し始める。
…まるで、醜く汚い闇を浄化する様な強烈な光を放って────。
◆◆◆◆
「さて。行くとするか。」
そう云って蓬髪に包帯だらけの少年が漆黒の外套を翻す。
「おい。どこ行くんだよ。」
茶橙髪の少年が後を追うように走り出す。
「お嬢様の所さ。」
そう呟いた少年の顔は言葉では云い表せぬ様な雰囲気を孕んでいた───。
◇◇◇◇
何時間車に乗っていたのだろうか。
彼等が目を覚ますと見慣れぬ景色が目の前に広がっていた。
「太宰。ここは何処だ。」
茶橙髪の少年が、訳の解らぬ所に連れて来られた憤りを露にして胸ぐらを掴む。
「だーかーらー。
お嬢様に逢いに行く途中なんだって。ほんと中也って理解力無いよね。」
太宰、と呼ばれた蓬髪の少年がくすくすと笑い乍応える。
糞っ。
中也、と呼ばれた茶橙髪の少年は悪態を付き、そっぽを向いた。
「おおっと…何があったのかな?」
車が急停車し、二人共々前につんのめる。
「す、済みません。前に人が…少女が飛び出して来たもので…」
車の運転手は迚申し訳なさそうに詫びを入れる。
「そうか。じゃあ此処で降ろしてくれ給え。もう此処迄来れば十分だ。」
そう告げると、太宰は車を素早く降りる。
「はぁっ?!あンの野郎…
悪ィ。ありがとな。」
中也は礼を告げ、太宰の後を追う。
「どうもこんにちは。」
『…………』
太宰が無反応な少女の前に膝を着き座る。
『……来ないで下さい。』
少女がやっとの事で絞り出した声が静かに響く。
少女は無視をしたのではなく、反応が出来なかったらしい。
ゆっくりと後退りをする少女と、
にこにこし乍追いかける太宰。
そしてそれを唯黙って見つめる中也。
『…これ以上近付けば、容赦しないですから、!』
少女は両手を胸の前で握り締め乍そう呟く。小さな声だが、まるで鈴の音の様に凛と響く。
「やれるものならやってみ給えよ。」
そう挑発的に笑う太宰。