第7章 危険なロマンス/太宰治
結局、数刻足らずで見つかってしまい、ゲームは終了した。
鼓動は早鐘のように打ち続け、呼吸はだんだん早くなる。
予想していなかった早さで呆気なく見つかり、魅月はただ「どうして」という感情しか浮かばなかった。
そんな彼女の追い詰められた表情を見ながら、太宰は支配欲にまみれていた。
あぁ、なんて美しい表情なのだろうと。
もし一緒に心中できたのなら、私はこの世の全ての幸せを手にしたようなものだと。
「はぁっ…」
喜びと欲からか、思わず息が漏れた。
さて、感傷に浸るのはそれくらいにして、彼女をどうしようかと考える。
「あんた、さっきから何ニヤついてるの!?」
魅月は恐怖を感じて思わず叫んだ。
太宰は我に返り、しっかりと彼女の瞳を正面から見据えた。
「君と、この後どうしようかってね」
あぁ、もう終わりだ…と魅月は思った。
この男と出会った時から、私はもう終わっていたのだ。
ぎゅーっと頭の中が痛くなる。
あの寂しさとやっと別れることができる。
目を閉じ、最後になるかもしれない深呼吸をした。
きっとここで、私の人生は──。
「んぅっ!!?」
唇に柔らかいものが触れ、魅月は意識を戻された。
まつ毛の整った綺麗な顔が、驚くほど近くにあった。
「(あ…私、私…嘘でしょ)」
感情が追いつかず、体が硬直した。
彼の腕は、そんな魅月の体を優しく抱きしめて、唇を一旦離す。
止まっていた酸素補給をすべく、驚きつつも呼吸を繰り返す彼女を、太宰は目を細めて見つめた。
そして、その細い顎を掴み、再び口付けをした。
今度は噛み付くように。
そしてもう、お互いに悟った。
─ここまできたら、もうだめだ。と。