第1章 嗚呼、君の美しい瞳よ/森鴎外
あぁそんなこともあったなあと、ぼんやり考えながら廊下を歩いていた。
時刻はお昼過ぎ。今日の昼は、ずっと気になっていたカフェにようやく行くことができた。
キノコとエビのクリームパスタをお腹いっぱいに食べ、食後に飲んだ紅茶のブレンドも、満足出来る美味しさだった。
今度は、尾崎さんも誘ってみようかなと考えたところで、あの方パスタとか食べるのかなと考え直し、窓辺の白い椅子に座ることを想像する。
思わず笑みが零れた。
そんなことを考えていると、上司の部屋の前まで来た。
この大きな扉はいつ来ても緊張する。
ここの求人の唯一の欠点。それは、あまりのも大まかな仕事内容だった。
自分自身、あまりの条件の良さにそこを気にしていなかったことにも落ち度はある。
しかし、出勤初日に「あなたには、社長もといポートマフィア首領である、森鴎外氏の秘書をお願いします。緊急時には、戦闘部隊がお守りしますし、自宅待機して頂いても構いません」と担当に言われ、思わず「え?なに、ボス?」と素っ頓狂な返事しか出来なかった。
だが、実際に仕事をしてみると案外普通の事務員のような感じで、休憩もしっかり取れるし、何よりほとんど定時に帰れるため、残業は月5時間あるかないかくらいだ。
深呼吸をし、夜凪は、左手に束になった書類を持ち右手でドアを三度ノックする。