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夕顔

第9章 男と女、約束の交わし方






どこまでも暗い、そしてどこまでも果てがない宇宙。
窓枠に座り、それを意味なく見つめる時間が皐月は好きだった。


虚が本格的に動き始めた最近、宇宙全体の治安が確実に悪くなった。この騒ぎが全て、一人の男が自殺したいがためのものだと知ったら卒倒するだろう。実際彼女はそれを知った時、倒れそうだった。

これから起こるであろう宇宙戦争。
その最後の舞台に選ばれた"地球"。

この星と宇宙全てを巻き込んで、この世を虚とする。
もう本当に止まれないところまで来てしまった。


暗闇を当てもなく見つめている途中、ふと銀時に会いたくなった。
彼の仇と言ってもいい奈落の一員である自分が望んでいい事ではない。恨まれているだろう。視界にすら入れたくないだろう。

だが、死ぬ前にもう一度だけ。
銀時の目に映りたかった。

色々並べているが結局、彼女の本懐は彼を大切に思いたい、思われたいという事。この後、皐月は底のない闇へ沈んでいくさだめ。完全に見失ってしまう前にその背中を、守ろうとしたものを見ておきたかった。


いや、確かめたいだけだ。
自分はちゃんと守れていた、と。
自分にもちゃんと、大切にできるモノがあると。

全てが終わった時、ちゃんと自分がうつろへ帰れるように。




だが、否応無しに彼とは会う事になりそうであった。
朧の指示で喜喜と共に、地球から飛び立とうとしている快援隊を追えと言われていた。彼らの動きを追うとともに、この後の戦争のために将軍を星から遠ざけておこうとでも考えているのか。

伊賀での一件以来、喜喜にいたく気に入られていた皐月が船に乗り込むのは、アリを潰すより容易かった。ただ想定外だったのは、彼が思ったよりも喧嘩っ早く、思った以上に弱かったことだ。

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