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夕顔

第6章 男のタマは時に刀でも切れない





満天の星空に欠けた月が昇る戦場。
攘夷派の本拠地である屋敷の門の上に、今夜の見張り役である銀時はいた。


今日の戦では、相手の幕軍共々かなりの痛手を受けた。
もう武器も、兵も、限界が見えてきている。
幕府側の兵に天人が増えてから、それまで優勢を保っていたパワーバランスも傾き始めていた。勝ち戦よりも負け戦の数が追いつきそうだった。

だが彼らは止まれない。
吉田松陽を取り戻すまでは。



銀時はそっと目を閉じた。

瞼の裏に映るのは、目に焼き付いて離れないあの日の光景。
皆を、松下村塾の仲間たちを守ると約束をしたあの時。
燃え盛る炎に消えていった思い出と、置いてきてしまった想い。

かたん、と横の瓦が踏まれた音が鳴る。
ゆっくりと目を開く時、懐かしい匂いがした。


「こんな戦場のど真ん中、夜空見上げながら寝てるなんて。攘夷派の未来は明るいな。」

こんな野郎しかいない場所には合わない、穏やかな声。
銀時は何故か驚かなかった。
彼女がここに来ることを知っていたかの様だった。

「なーんの用だぁ?ひっさびさの再会なんだ。酒の一本でも持ってきてるんだろうな。」

「銀時は、酔うと面倒臭そうだな。」

「何なんですか?ストーカーですか?何で知ってるんですか?」

日が出ていないにも関わらず、隣に腰掛けた皐月は傘をさしている。横目でみた顔は、美しさの中にあった可愛らしさも完全に形を潜め、人間離れしたものに変わっていた。

「君の毛根は相変わらずの様だな。安心した。」

「さっきから何?!悪口言いにきたの?!昔から気にしてるの!案外デリケートな問題なんだぜこれ!」

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