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BERKUT【PSYCHO-PASS】

第17章 楽園事件:8


「、宝は物だけを指すものじゃない。時には人であったり、思い出のような物質のないものだったりする。」

「そうなんですか?」

「あぁ。だからきっと思い返せば宝はもっと出てくるし、これからも増える。」

増やすにはまず時間が必要だ。生きなければいけない。だが生き方は自由だ、こうでなければいけない、などということはない。それでもには難しい。きっと心のどこかでは何かあれば阿頼耶がいる、と思っていたのかもしれない。もう自分のこの不思議な身体をどうにかできる人はいない。亮一のように共感できる人もいない。家族もいない。結局たどり着くのは孤独だ。どんなに守りたいものがあったとしても、それらはシビュラに守られている。つまり自分は無用の長物じゃないか。
いつのまにかキッチンで紅茶を入れている宜野座を見つめた。左腕は無機質な義手なのに、所作は人間そのものだ。あの義手ですら人になっているのに自分は人の形ができても人にすらなりきれていない。紅茶だって入れ方を知らない。普通の人になりたい。そうすれば良い生き方ができる気がした。だがどこから手を付けていいのか分からない。何をして何をしないのが人なのだろう。

「どうした?」

ぼんやりとしすぎてハッとする。宜野座が茶器をテーブルまで運んでいた。自分のために入れてくれたのだろうが、そこに座って良いものかも分からない。

「ほら、座って飲みなさい。」

言われてやっとソファに座る。その向かいに宜野座も座る。彼はグラスにウイスキーを注いでいた。持つと氷がカランと鳴る。

「いただきます。」

はティーカップを口に運びながら思う。いつも誰かの指示を待ってしまうことを。亮一の時は二人で考えていたのでそこまで実感がなかったが、思い返せば決定は彼の方だったかもしれない。一人では何一つ決められないのにどうすれば…。温かい紅茶が体内をつたっていく。仄かに甘く、仄かに苦い。美味しいのかどうかは分からない。何が美味しくて何が美味しくないかが判断できるほど味を知らない。それでも狡噛と行ったレストランは美味しかった。それは忘れていない。彼はしつこくいろいろ聞いてきたがとても安心できる人だったとは思う。
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