第3章 死不川実弥の話。
【Side???】
今の世界は基本的に前の世界に忠実で、家族構成は特に忠実だった。死因が鬼と関係ある人が若くして死んでなかったりする(時透無一郎の兄や、竈門炭治郎の家族など)が、実弥の父のように、純粋に人から恨まれ殺されていた人間は早死していた。また、鬼も鬼とて、人として転生している場合があった(謝花兄妹など)。前世の恨みはあるものの、今世は今世。鬼だった人たちも業や、贖罪を抱えて生きているように見えた。おそらく、彼らも記憶があるのか。それとも、なくとも何か感じるものがあるのか。それは分からなかったが、死不川実弥の周りの人間で前世に鬼と関わった人間は鬼に関する記憶を持ち合わせている人物が多かった。
「前世に近しい人間は固まってる筈なのに、」
何故、死不川玄弥は実弥の近くにいないのだろう。奏が記憶する限り、死不川実弥、玄弥はとても兄弟思いの兄であり、弟だった。鬼殺の才能に恵まれた兄と、残念ながら才はなかったものの、叩き上げの努力と、鬼喰い体質の弟。兄は弟の人生を守るために。弟は唯一残った家族の兄に向けた心ない言葉を謝罪するために。始めはわだかまりも酷かったが、玄弥の今際の際にそのわだかまりも説かれたはずだ。
始めは玄弥が身近に転生していないのは鬼喰いをしていたためなのかとも考えたが、よく考えれば、鬼だった者もいるのに、それはおかしい話だ。